第8章 臆病な顔

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 出なければいいのに、なぜか俺は電話に応じる。  耳を当てたそばから聞こえたのは、あのセリフ。 『ねぇ、どこにいるの? また、眠れなくなっちゃった……。 今すぐ会えない?』 「……二百万円」 『あぁ、それ。高津が手切れ金だって言ってたわ』 「じゃ、俺達はもう会っちゃいけないでしょ」 『何よ、今更? そんなこと言いながら、結局私の家の中に招き入れて抱いてくれたじゃない』 「……もう会わないよ」 『なんで?』 「だって、俺。今、すんっごい北に居るから」
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