第8章 臆病な顔

7/30
4854人が本棚に入れています
本棚に追加
/351ページ
『……どこよ? 何時間で来れるの?』  能天気な女だ……。 「行けないし、行かないよ。もう終わったんだから」  ぶっきらぼうに突き放してやれ。  女王様の思い上がりを潰してやれ。 「それに、あんた俺の奉仕痛がってたじゃん。 もう二度とやだって怒ってたじゃん。 三か月も経ってから、今更何わけわかんないこと言ってるの?」  ……わけわかんないことを言っているのは自分だ。  東京時代のものは全て、東京に捨ててきたって思い込んで、実際はなんでアドレスをそのまま大事に持っているんだ?  なんで、女王様の番号を消さなかったんだ?  浮気の痕跡になるからって、メールやLINEを嫌った女が唯一俺に繋いできた連絡手段は電話だった。
/351ページ

最初のコメントを投稿しよう!