赤いアネモネ

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 もう、手は伸ばさない。  声は届いた。  きっと気持ちも届いている。  そう思えた。  だって彼は、赤いアネモネを、わたしの花を、綺麗だと言ったのだから。  今、この時期に、あの赤いアネモネが咲いていたのは、偶然なんかじゃない。  あの赤いアネモネは、まごうことなく、わたし自身なのだから。  世界は交わった。  わたしはもう、満足だ。  わたしはずっと、世界と交わった証が欲しかったのだ。
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