赤いアネモネ

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 ゆっくりと口角があがり、唇が弧を描くのがわかる。  今までになく、ごく、自然に。  ふふっと音が漏れる。  これが笑うと、いうことね?  ああ、佐野くん。  わたしの存在がゆっくりと薄れて行く。  それを感覚で感じると、微笑んだまま目を閉じる。  佐野くん、あなたは、わたしにとって、世界そのものでした。  わたしはアネモネ。春に咲く花。  早春の風と共に咲く花。  どうぞその名前を、覚えていてください。  春がきて、アネモネが咲く度に、また綺麗だと言ってください。
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