危ない車

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危ない車

 前の車、危ないなー。  この暑いのに後部座席の窓が全開。それはまあいいとして、そこから乗ってる奴が脇まで手を出している。  むしろあんなことをしていたら、直射日光と熱した車体の両方に焼かれそうだ。という考えは置いておいて。  あの腕の出し方を見る限り、シートベルトはしてなさそうだ。  ただ手を垂らしているだけでも危険だけれど、それがしょっちゅうバタつくから、対向車に当たりそうでヒヤヒヤする。  運転してる奴、注意とかしないんだろうか。それともそういう奴が同乗してる段階でお察し、ってことか。  なるべく車間を空けてはいるが、もし二車線あったら追い抜きたいレベルだ。そのくらい、前の車から出ている腕は危険極まりない。  何とかあの車と離れることができないだろうか。  そう思っていたら、道路脇にコンビニが見えて、俺はすかさずそこの駐車場に入り込んだ。  ちょうど飲み物が欲しいと思っていたところだったから、中で少し時間を潰しながらお茶を買い、車に戻る。と、そのタイミングで救急車のサイレン音が耳に入った。  もしや、あの車が事故を起こしたのではないだろうか。  そんなことを思いながらコンビニを離れ、さっきの道を進んでいくと、案の定さっきの車が事故を起こしていて、ガードレールを突き破るように停車していた。  その傍らに救急車が乗りつけられていて、運転席から降ろされた男が担架で運ばれて行く。だが運転手を運び入れただけで救急車はその場を立ち去ってしまった。  後部座席に乗っていた奴は平気だったのか?  でも、たとえ怪我をしていなくても、普通は怪我人に付き添うものだろう。それともパトカーがじきに来るから、そちらに説明をするため残っているとかなのか?  不審に思いながら事故車の横を徐行運転で通りすぎようとした時、ガラス越しに車内が見えた。
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