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ーーなんか放って置けないんだよなぁ
風太の今の心情を表すとしたら、そんな思いだろう。自分より遥かに年上の男のことが、何だか放って置けないと思ってしまったのだ。
「でもな、例えそうだとしてもあんまり夜中にウロウロするな。最近、かなり物騒になってるからな。何かあってからじゃ遅いから」
圭太が、父親らしい言葉で風太を諌める。それに対しては風太も負い目があり、素直に頷いた。
「よし。俺らからの話は終わりだ。ーー明日も学校だろ?そろそろ寝ろ」
「うん、おやすみ」
「おやすみ」
二人に挨拶をした後、風太は自分の部屋へと向かった。スマホの点滅で、奏から着信があったことに気付いたが、時間もかなり遅くなっていたので折り返しはしなかった。
また、明日学校で会えるからいいかと、思ったのだ。
深い意味はない。でも、ほんの些細なことからすれ違い、最初は小さな綻びがどんどん大きくなって、取り返しの付かない亀裂を産んでしまう。
家族の絆を強く感じたばかりだから、人と人の関係は酷く脆いものなのだと、今の風太には思いも付かなかった。
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