本編

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 今日も今日とて特にあてもなく街へ出てきた。ただ人が慌ただしく流れているのを、ぼんやりと眺めるだけのために。  ふと、一際目を引く美女を見つける。身体のラインをあえて魅せる赤いワンピースに、黒い艶のある長い髪。妖艶な雰囲気を纏う美女が、こちらに向かって歩いてくるように思える。 「そんなわけないな」  偶然こちらの方向に用があるだけだろう。そう思い、視線を外す。  だが、その美女は俺に声をかけてきた。間違いなく、俺に。 「あなた、魔法使いになってみない?」 「はい!……はい?」  美女に声をかけられ、何も考えずに返事をしてしまう。魔法使いってなんだ? 「あら、説得の必要もないなんて。ありがたい限りね」  しまった。少しくらい渋っていたらお姉さんにいいことをしてもらえたかもしれなかった!? 「名前を聞いてもいいかしら?」  ナンパのような雰囲気にちょっとテンションが高まる。言ってることはちょっとあれな人だが、可愛いならなんでもいい! 「新井陽太です」 「ちなみにだけど、あなた、童貞よね?」 「え……?」  突然美女の口から童貞などと言う単語が聞こえて言葉を失う。決して図星をつかれたからではない。決して……。     
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