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リンが声を裏返しそうになりながら口を挟む。言われてみれば気になることだ。シローとの偶然がきっかけとしてあるにしても、卒業生が自ら会いたいと言い出すからにはそれなりの理由があるに違いない。シローは黙ったまま視線だけでリンの質問に便乗した。
高澤はまだ少し笑いの余韻を残した表情で、背もたれに体重を預け口を開く。
「そうだねえ、陣くんは誰よりも悩める青少年だったからね」
シローとリンは顔を見合わせたけれど、それより詳しくは高澤も言うつもりがないようだった。
ちょうど予鈴が鳴ったこともあって、高澤は話を打ち切りふたりに教室に戻るよう促す。どうやら高澤自身もどこかで授業があるようで、それ以上食い下がれるような雰囲気でもなかった。
存外リンもあっさりとそれに従い、シローの背を無遠慮にぐいぐい押しながら「失礼しましたー!」と職員室を出る。
だがその直後、
「気になる」
シローの背後でリンはそう声を低めた。逃げの姿勢をとる間もなく、シローは後ろからグッと肩を掴まれうぎゃっと声をあげる。
「シロー、その陣さんって人が高澤先生とどういう関係だったのか、レッツリサーチよ」
振り返ると、リンが真顔で親指を立てていた。アホか、とシローはそれを一蹴する。
「リサーチも何も、普通に生徒と先生だろ。悩み事とかを高澤先生によく相談してたとかそういうんじゃねえの」
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