1.大盛りとふわふわ

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1.大盛りとふわふわ

「……で、単品のミニサラダ。あ、あとライスは大盛りで」  言われた通りシローが注文を書き終えると、彼はいつものように「よろしく」とはにかんだ。  よく見知った常連客だ。手足のすらりとした若い男で、明るい色に染められた髪は梳いた犬の毛みたいにふわふわとしている。  今日もひとりで夕飯を食べに来たのだろう。  おとなしそうな見た目の割に、彼は量が多いと評判の大盛り定食もいつも米粒ひとつ残さず平らげていくことを、シローは知っていた。それから、いつもミニサラダのトマトだけを残して行くことも。  実のところシローは、注文を尋ねながら「今日はかつとじ定食だろう」と予想してみていたのだが、残念ながら注文されたのは親子丼だった。  またはずれだ。今のところ全敗である。  そろそろ当たってもいいのにな、とシローはぼんやり思いながら、名前も知らない常連客のために膳の用意をする。二十一時をまわった店内は、客席も厨房もどこか静かだ。すぐに厨房から料理が上がるのを待つだけとなり、シローは振り返り店内を見回した。     
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