第1幕:背負われる歌姫

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一番を歌い終わり、間奏。 歓声を浴びながら、再び体でリズムを刻む。 すると、突然。 「うっ……ぷ」 腹の底から沸き上がってきた吐き気。 同時に背筋がゾクリと冷えた。 危機を察知した私はマイクを他の女に押し付け、すぐ横の扉から部屋を脱出。 そしてトイレへ猛ダッシュ。 ギリギリセーフだった。 マイクを握ったときから、こうなるであろうことは予測できていた。 苦手な酒をじゃんじゃん飲まされたフラフラの状態で、フルコーラスを無事に歌えるわけがない。 だったら飲まなければよかったのに。 歌わなければよかったのに。 「合コン」という場では、それが通用しなかった。 酒をたくさん飲んだのも、全力で歌ったのも、私の意思ではない。 「明日香ちゃーん? 大丈夫ー?」 今、トイレのドア越しに声をかけてきた、憎きこの男の仕業なのだ。
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