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少女像の怪談
とある交差点。
交通事故で死んだ若い娘を慰霊するブロンズ像が建立された。
冬の真夜中。交通量調査のバイト中、無茶苦茶な運転で歩道に乗り上げてきた車に引きずられ、轢死したのだった。しかも犯人は現場から逃走し、捕まっていなかった。
少女の家族や友人たちは悲しんだ。
この像は彼らの無念の思いが多くの人の協力を得て、成ったものだ。
美人ではないが温厚な性格そのままに、像になっても車量観測の仕事をするかのように、椅子の上に行儀よく、静かに座ったその姿は故人と生き写しだった。
なぜ慰霊碑ではなく像にしたかとの問いに、ボランティアとして像の設置に尺力した若者の一人はこう答える。
「ひき逃げ犯にも心があるはずです。被害者の遺影がこうしたかたちで目につく場所にあれば、犯人が罪を悔いて自首してくれるかもしれないでしょ?」
† † †
車田のりおは、朝晩、通勤と帰宅の時にかならず通らねばならない交差点に居すわった少女像を見るたびに、顔を背けた。
犯行がバレないかとおびえ、一日も早く事故を忘れ去りたい者にとっては忌まわしい光景に違いない。
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