思い出話に花を咲かせて

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「早いね。もう八分咲きか」 病室から見える桜は、先ほどの写真とはすでに印象が変わっていた。 もうすぐ夜へと移り変わろうとしている空にぼんやりと浮かんだ、どこか妖艶で、そして手を伸ばせば消えてしまいそうな。 「すぐに満開になるね。私たちが出会った季節に」 「もう、2年も前なんだね」 彼に視線を移すと、彼もまた目を細めて桜を眺めていた。 ほとんど一日中そこにいるであろうベッドのシーツからは、少し湿った汗の香りがしていた。 「ねえ空、覚えてる? 空がクラスでした自己紹介」 「覚えてるよ。桜の写真の話でしょ?」 「そう」 目を閉じると、汗の匂いとともに空の匂いが鼻をついた。 あたたかな陽だまりを思わせる、やわらかく優しい匂い。 その匂いとともに、私は2年前のことを思い出していた。
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