転校生

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「時には遊ぼうぜ」 不満を口にするそいつに間宮は笑顔でかわした。 その逃げ方に素直に関心した。あんなに感じよく人の誘いを断るやつが居るなんて俺は知らなかった。 間宮は勉強も運動も普通に優秀で非の打ちどころがなかった。 だが俺は何かが引っかかって仕方なかった。 それは見てしまったからだ。 あの日は別に何も変わらない普通の日だった。ただ外が少し黒い雲に覆われていた時だった 頭が痛いと保健室に入ってきた。 片頭痛という奴らしい。もともと保健室に入り浸りたいが為に入ったこの委員会。 高校になれば怪我する奴なんかそんなにいないうえ、具合が悪いと保健室に来る奴も少ない為 休み時間は俺の場所と言っても過言ではない。 久しぶりの患者が間宮だったのだ。 「俺片頭痛とか持ってないから分かんないんだけど 冷却シートいる?」 「大丈夫だよ 少し休ませてくれたら治るから」 こんな時まで笑顔を崩さない。そんな間宮が不思議で仕方なかった。 俺だったら自分がしんどい時無視して眠ると思ったから。 「えっと 高木 光くんだよね」 「そうだけど それが?」 「あまり話したことないから 話してみたくて 高木君いつも休み時間居なくなるから」 「一様委員会の仕事があるから だいたいは個々にいるよ それより寝たら?すごい顔色」 もともと色は白い方であろう彼の顔は真っ青というより色がなかった 冷や汗をかいていて目は虚ろ、こんな時までなぜ話そうとするのか分からなかった。 俺が眠るように促すとすぐに眠ってしまった。 そんな奴を保健室に一人置いておくわけにも行かない 先生もいない。俺はそれを理由に授業をさぼり空いているベッドに寝転んだ。 20分程した時だった 隣から鼻をすする音とうなされているような声が聞こえ様子を見れば 手を天井に伸ばしボロボロと涙を流している間宮の姿があった。 「行かないで」そう呟く彼の天井へ伸ばした手を握り「大丈夫」と声だけかけた。 俺にはどうしたらいいか分からなかった。だからと言って起こすことも出来なかった。 起きた彼と何を話せばいいか分からなかったから。 涙をふき取り 布団を肩まで掛け 俺は何事もなかったかのように隣のベッドに寝転がった。 「これは見られたくないよな 普通だったら」
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