3年後の秋・隼人の夜

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3年後の秋・隼人の夜

金曜日の夜だけあって街は賑やかだった。 隼人は協力会社の社長と、取引先の担当者2人を接待していた。 新鮮な魚介類や各地から取り寄せた野菜や肉類を炉端で焼くタイプの、洒落た居酒屋の個室で、大口の取引について酒を混じえて情報を引き出していた。 隼人の会社だけでこなせるような量ではなく、同じ程度の力量を持ったサプライヤーの協力が必要で、今回の接待の場で顔合わせとなった。 取引先としては、隼人の出した見積もりもほぼ要求通りで、あとはどれだけの物量をこなせるかの確信を得たかった。 商談としてはお互いの不安が払拭されたというてんでは成功だった。 「横山社長、今夜はありがとうございました」 居酒屋を出た所で担当者の1人が礼を言うと2人で頭を下げた。 「いえいえ、 こちらこそわざわざ遠い所を足を運んで頂いて ありがとうございました」 「来週早々に上に正式取引の決済の承諾をもらいますので、追って連絡致します」 「ありがとうございます。 期待しておりますし、 その際には、万全を期して協力させて頂きます」 今度はこちら側2人で頭を下げて駅の改札まで送った。 竹内と言う協力会社の社長が 「横山社長、迎えは?」 「かみさんに来てもらいます」 「良いなぁ、 うちなんか接待なら経費で落とせるんだから 代行使ってかえって来てよ…だってさ」 そう言い残し、竹内とは駅前で別れた。 隼人はLINEで美由紀とのトーク画面を開いた。 「今終わりました。 迎え、お願いします」 「OK」 と直ぐに返信があった。 早くても30分は掛かると見込み、駅前のバーに入ってカウンターに座った。 バーボンをロックで頼んで何気なくスマホを眺めた。 ホームボタンを押すと、美由紀に送ったままのLINEの画面が浮んだ。 今や誰からのメッセージも無い。 LINEを利用するのは美由紀か、仕事関係の一部だけだ。 何気なく、友達検索をタッチして ELENAPPLE と打ち込んでID検索をした。 検索結果で一件だけヒットした。 ホーム画面には3年前と同じ、彼女の笑顔が写っていた。
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