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彼女の一冊
カシャ。
僕の隣でシャッター音が聞こえる。
「私、あと一年しか生きられないんだって」
そう呟いた彼女の顔は妙に晴れやかだった。
僕と彼女が出会ったのは一年前。
夕陽が綺麗なこの丘で出会った。先に居たのは彼女。ここから見える鮮やかな光に惚れたのだそう。そして僕はそんな光に照らされた彼女に惚れた。あの日から彼女に会うために丘に行った。いつ行っても彼女はカメラ越しに夕陽を見ていた。
「写真好きなの?」
そう聞いたとき、彼女の顔が少し陰ったのを今でも覚えている。
「・・・うん、好きだと思う」
彼女にとって酷な質問をしたようで苦しくなった。
「私ね、【アルバム】作ってるの」
彼女の言葉に、迷った。『何故』と聞いていいものか。また彼女の顔を曇らせたくない。
「そうなんだ」
気の利く台詞なんて言える程、僕は大人では無いことに無性に悲しくなった。
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