弐:ケガレある乙女

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「よいか、美穂。 おぬしはセキと正式に“契りの儀”を交わした“花嫁”じゃ。すでに“神籍(しんせき)”にも入っておる」 「……だから?」 「つまり、一度摘まれた花(・・・・・・・)──人間(ひと)ではない」 「…………はぁ? なに言ってんの? あたし、人以外のものに、なったつもりはないんだけど?」 いきなり訳の解らない話だ。この世界に来て、いったい何度目であろうか。 美穂は、だんだん嫌気がさしてきた。 「おぬしにとっては不本意なことじゃろうが、これは覆しようもない事実。 人外のモノ(・・・・・)を人間に戻す──それなりの手順は必要となるものじゃ。 そのための準備期間と思ってくれると有難い。どうじゃ?」 「……分かったよ。半月待てばいいんでしょ」 しぶしぶ承諾する美穂に、闘十郎は大きくうなずき返してみせた。 「物分かりの良いおなごじゃの。 ……もちろん、あとで気が変わったとしても、わしは一向に構わんからの」 小声で付け足された言葉は、美穂の耳には届かなかった。 「すぐに帰れなくて悪かったわね」 「じいさんって、あたしより年下じゃん」 ──その晩。
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