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「よいか、美穂。
おぬしはセキと正式に“契りの儀”を交わした“花嫁”じゃ。すでに“神籍”にも入っておる」
「……だから?」
「つまり、一度摘まれた花──人間ではない」
「…………はぁ? なに言ってんの? あたし、人以外のものに、なったつもりはないんだけど?」
いきなり訳の解らない話だ。この世界に来て、いったい何度目であろうか。
美穂は、だんだん嫌気がさしてきた。
「おぬしにとっては不本意なことじゃろうが、これは覆しようもない事実。
人外のモノを人間に戻す──それなりの手順は必要となるものじゃ。
そのための準備期間と思ってくれると有難い。どうじゃ?」
「……分かったよ。半月待てばいいんでしょ」
しぶしぶ承諾する美穂に、闘十郎は大きくうなずき返してみせた。
「物分かりの良いおなごじゃの。
……もちろん、あとで気が変わったとしても、わしは一向に構わんからの」
小声で付け足された言葉は、美穂の耳には届かなかった。
「すぐに帰れなくて悪かったわね」
「じいさんって、あたしより年下じゃん」
──その晩。
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