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思わず立ち止まり、ゼイゼイと息をつく。
なぜ大学2年生にもなって、こんなに全力で走っているのだろうか。
肩で息をし、汗が首筋をつたう。肩まである髪は、ぬるい風に揺れていた。
9月とはいえ、京都の夏は暑い。
照りつける太陽が体中の筋肉をきしませている。
晴子は辺りを見回し、人がいないのを確認すると、近くの日陰へと移った。
「走るがいい! 若き歌い手よ! 君たちは何のために歌う?
何のためにその道を駆け抜けるのだ!」
走っているのは、本意じゃないんだけどな……、と晴子は遠くから聞こえてくるその声に、心の中で呟いた。
日差しが当たらずとも、汗はどんどんと流れ出る。
手首に巻いた2本のリボンは、少しだけ湿っていた。
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