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「うっさいボケぇ」
それにしても何なんだ、この色気のない会話は。
さっきまであんな事もこんな事もしていたって言うのに…。
なんだかやるせない気持ちになり、隠すように智の肩をグーで軽くついた。
「ちょ、何すんのよ。零れたじゃない」
もー、と言いながらティッシュでバスローブをふく手を思わず掴む。
「な、なに...」
「もっかいしよ」
「はぁ?どんだけ溜まって...ん...」
不満を口にする唇を俺のそれで塞ぐ。
俺は細くて折れそうな右手から素早くグラスを奪い取り、テーブルに置くと逃げられないように智の頭を固定して執拗に唇を吸った。
最初は抵抗していた智も、諦めたのかされるがままになる。
そっと唇を離すと困ったような視線とぶつかる。
「ビール...ベタベタするからシャワーだけ浴びたい」
拗ねたように言うのが可愛くて、思わず顔が綻んでしまう。
「一緒に浴びる?洗ったるよ?」
「絶対にイヤ」
拒否が早いな、オイ。
「どうせまたベタベタになるで?」
「ほんとエロ親父...このまま帰るよ?!」
「...すみません、浴びてきてください」
そして俺はまたあっさり負ける。
そんな馬鹿なやり取りを、窓越しに冷たい月が見ていた。
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