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「アオちゃん!待って~!」
ハァハァと息を切らしながらおさげの少女が俺の後を追ってくる。
「ついてくんなって言ぅてるやろ!智連れていったらアイツらにまたバカにされるやん!」
まだ小学生の俺は男友達との秘密基地遊びに夢中で、いつもアオちゃんアオちゃんと付いて回る幼なじみが邪魔だった。
秘密基地がある河原までの道をクネクネと回り道しながらなんとか智をまこうと走っていた。
途中にある大きな公園の、木が生い茂った所をわざと抜けたり、智が前に引っ掻かれて大騒ぎになった大きな犬のいる家の前を通ったりして付いてこれないようにした。
さすがに疲れてきて歩きながら振り向くと、智の姿はなくうまくまけたと安心して秘密基地に向かった。
「お、匂坂。今日はアイツ連れてないん?」
すでに基地には何人かの友達がいて、その内の1人の中野が声をかけてきた。
「アイツが勝手に付いてくるだけや。今日は上手いことまいてきたった!」
「ふぅん。ま、男の遊びやからな!一之瀬も他の女子と遊んだらええのにな」
智は異常なほど人見知りで、俺以外の奴とロクに話もできん奴やった。
俺にはそれが鬱陶しくもあり、少し優越感を感じることもあった。
「アイツのことはええから遊ぼ!」
男らしいって言うことの意味を履き違えていた子供の俺は、智を側に寄らせるのが嫌だったんだ。
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