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「早く!そっちへ行ったわよ!」 「うん!分かった!追い詰める!」 どういう名前なのかは知らないけれど、私は黒い大きな鳥へ全速力で向かう。 短期決戦だ。 みんな、私が魔法使いだからって、よく勘違いしてるんだけど、箒に乗っている限りずっと飛び続けられるなんて、そんな便利なことはない。 すぐに魔力切れになって、ふらふら落下してしまうのがオチだ。 だから、こうやって。 ピーーーーーー 私が笛を鳴らすと、鳥はそれを嫌がるように軌道を変えた。 よし、このまま………っ。 後ろから追いかけたのでは、いつまで経っても捕まらない。こういう時は、横に回り込んで高い音を鳴らし、鳥を嫌がらせて錯乱するのが得策だ。 今度は反対側へ近づく。 完全に隣り合わせになろうなんて、そんなことは全く考えてない。 斜め後ろくらいからで良いのだ。 「いや、完璧に真横じゃないとダメ」なんて言う政治家タイプの人は、この仕事、向いてないのね。だって、真横に行けるんなら、笛なんて使わずにさっさと捕まえろよって話だから。 鳥が迷っているのが分かる。 私に遠ざかるように飛ぼうとしているのだろうが、体の向きを急に変えるのはかなりの力が必要だ。何回も連続でしているとバテてしまう。 そこへ、私が最速の魔法弾を撃った。 左手から淡い黄緑色の弾丸が飛び出て、ぶつかる………前に、鳥は羽を強引に傾けて躱した。 「オーケー!よくやったわ!」 「うん!」 私はメルサに親指を立てる。 最初からこういう算段だったのだ。 私が追い立てて、体のバランスを崩したところで、メルサが捕縛する。 「よーし、つっかまーえたっ!」 箒にまたがった彼女が、ぐんぐん近づいてくる鳥に触れた途端、ブワッと赤い糸がたくさん出てきて、その鳥へ絡みつく。 この名前は、魔法網。魔法でできた網だからね。シンプルな方が覚えやすくて、それはつまり言いやすい。凝った名前やカッコイイ名前より、実用性を重んじるのは当然でしょ? ガチ、ガヂガヂガヂ 鳥が荒々しく嘴を打ち鳴らした。 が、一向に切れる様子はない。 無事、捕獲依頼は完了したわけだ。 …………… 「にしても変な人ね。こんな動物を飼ってるなんて」 「飼うのは勝手だけど、それを逃しちゃうのはどうなの?私達がいなきゃ、絶対に何人か死んでるって」 「でも、こういう人がいないと私達が困ったことになっちゃうもん」
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