続・完璧男子に類なし

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封筒を手に、俺は、古びた家の前に立っていた。 封筒の中には、あのときの写真があった。 頭脳明晰・容姿端麗・品行方正。 完璧男子と名高い瀬戸涼太の、乱れ狂った写真が。 あれから3日。 瀬戸はずっと学校を休んでいた。 教師も生徒も、男も女も、 誰もがあいつのことを心配している。 皆、口を開けば「瀬戸くん」「瀬戸くん」。 俺はそれが、気に入らなかった。 だから、この写真を使って脅して、学校に来させようとした。 逆らうなら、あのときのように身体を使ってもいい。 インターフォンを押そうとしたとき、 「うちに御用ですか?」 後ろから、爽やかな声が聞こえてきた。 振り向くと、見た目も爽やかな青年が立っていた。 「あ・・・瀬戸さんちの、人?」 「そうですけど、もしかして・・・兄に御用ですか?」 「兄?じゃあ、お前は瀬戸の」 「弟です。瀬戸汀と申します」 汀はぺこりと頭を下げた。 こいつもこいつで、相当人気があるんだろうな。 礼儀も正しいし。 「申し訳ないのですが、兄は体調を崩して寝込んでいるんです。  あ、もしかしてその封筒を届けるために来てくださったのですか?」 「あ、いや・・・」 慌てて封筒を後ろに隠す。 さすがにこの中身を弟に見せるわけにはいかない。 俺もそこまで鬼畜じゃないからな。 「ちょっと、様子を見に来ただけだから」 「そうですか。わざわざ、ありがとうございます」 再びぺこりと頭を下げる汀。 「それにしても、兄は本当に皆さんから愛されているんですね」 「え?」 「ここ2日間で、たくさんのお友達が来てくれたんですよ!  ほとんどが女性でしたけど、男性も何人か」 「・・・・・・」 汀は、俺が知りたくなかった事実を笑顔で突きつける。 少し不愉快だ。 「中にはお見舞い品を下さる方もいて・・・」 「あのさぁ」 「はい?」 声を低くして、俺は汀の話を中断させた。 「そんな話。どうでもいいんだけど」 「・・・・・・すいません」 素直に汀は謝る。 その態度が俺の怒りに油を注いだ。 「あぁそうだな。確かにお前の兄貴は愛されてるな!  ただ、そんな兄貴を憎らしく思う人間もいるってこと、知っておいた方がいいぜ」 「・・・・・・・・・なるほど、あなたが」 「え?」 汀はしばらく考え込んで、俺に向かって手を伸ばした。 もう、笑顔は消えていた。 「封筒の中身、見せてください」
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