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「……っ、ほんっと、ムカつく!あの野郎っ!!」
「落ち着け。ほら、水飲め、水」
「飲むっ」
グラスを傾け、ぐいーっと飲み干す。
ゲホゴホと噎せてしまった俺の背を、ジェラは優しく撫でてくれた。
今日は酒場でもジェラの部屋でもなく、俺の私室だ。人払いもしたから静か。だからなおさら言葉が荒く、大きくなる。
「あの!にやけた面を!殴ってやりたい!ああいう奴が権力者だから、この国は腐敗してるとか言われるんだ!」
「ごめんな…あんな奴と血が繋がってて…」
「ジェラは悪くない!…、っ、俺の方こそ、父親のこと、…悪く言って、ごめん」
「いや、あの人は本当にクズだから…」
「…」
「…」
何とも言えない沈黙が流れる。
実の息子にクズと言われる父親って。
「俺はあの人を父親だと思ったことはないんだ。そもそも一緒に暮らしたこともない。産まれてから…一度だけ、母さんが病に犯されて余命幾ばくもないと言われた時に会っただけで…それ以外は記憶にない」
「え?見舞いに来たのか?」
「いや…見舞ってほしいと伝えたら、『お前のような奴は知らない』と門前払いされた」
「~っ」
「だから、落ち着けって。大丈夫。もう何とも思ってないよ」
「…。本当に?」
「…まぁ、その、少しは…」
「俺に嘘つくのはなしだ」
「正直、不幸のどん底に堕ちろとは思う」
「うん。正しい感覚だ」
今まで、貴族の振舞いに対してこんなに激しく腹立たしい思いをしたことはない。どんなに悪行を働いても、「ああ、またか」としか思わなかった。でも、バージェ卿のやることなすこと、全て癪に触る。
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