恐怖のカタチ

2/14
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
 子供のころは、近所の産土神様の社の床下や隙間に入り込んで悪戯したり、お寺の大きな銀杏の木に登って枝葉を折ったり、田んぼをカブトエビやドジョウを探して走り回っていた。そうだな、ご近所さんの庭に植わっている木とかに登ってよく柿やみかんを採っていたなぁ。  そんな大人げない悪戯を繰り返し、ガキ大将のような存在に引っ付いていろんなところを走り回っていた私たちは、小さな山賊と揶揄される程の悪さをしては、よく大人たちに怒られていた。だが、集団でいるときほど人間は強くなるものでね、怒られても悪態をついて反省することはなかったよ。  そんなやんちゃで怖いもの知らずだった私にも、怖いものができた。 田畑の中にぽつんと立っている小さな納骨堂。あの日から、私にはそれが恐ろしかった。  物心がつくかつかないかのころ、母にあの小さな建物はなんだと訪ねたことがある。 その当時の私の頭の中には、RPGのダンジョンの、小部屋のようなものを想像していた。あの建物の扉を開ければ、何か封印されたものがいたり地下世界に続く階段が隠されているのだろうと。  だが、現実にはそういうものはない。母はざっくりとお墓のおうちだよ、と答えた。それに対し、私は家型の墓なのかと勝手に納得し、つまらなさを感じていた。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!