第一章 ドッペルゲンガー

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「それではこれより二手に別れる。阿那婆達多、和修吉、優鉢羅は(わたくし)と共に参れ。残りの者は跋難陀に従い、摩瑜利を見つけ出すのじゃ」 「お待ちをッ、如何(いかが)するおつもりか?」  鋭い声を娑羯羅が発した。 「お前の知ったことではないッ」  難陀の代わりに跋難陀が答えた。 「貴殿(あなた) には聞いておりませぬ、姉君にお答え頂きたい」 「貴様……」  弟を手で制し、難陀が口を開いた。 「浅はかよのう、(わたくし)太元帥(たいげんすい) 殿を裏切るとでも思うてか? (わたくし) は摩瑜利の他に土産を持って帰るつもりなのじゃ」  横柄な言葉に、娑羯羅は眼を細めた。 「その土産とは?」 「さぁ、何であろうなぁ」  難陀は娑羯羅に背を向けた。 「追っ手が居ります。まず、その者を片付け、摩瑜利を手に入れることが先決」 「ホホホ……たった一人の追っ手に、八大竜王全員が必要かのう?」  (あざけ) る難陀の声に、娑羯羅は奥歯を噛みしめた。 「御自分で仰ったはず、追っ手が一人ということは、それだけ危険な者だと」 「どんなに危険な相手でも、一人の追っ手に対し八大竜王の四人が相手じゃ。うぬはそれを油断と申すか?」 「…………………………」  娑羯羅の沈黙に難陀は振り返った。その顔には勝ち誇ったような笑みが浮かんでいた。     
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