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「それではこれより二手に別れる。阿那婆達多、和修吉、優鉢羅は私と共に参れ。残りの者は跋難陀に従い、摩瑜利を見つけ出すのじゃ」
「お待ちをッ、如何するおつもりか?」
鋭い声を娑羯羅が発した。
「お前の知ったことではないッ」
難陀の代わりに跋難陀が答えた。
「貴殿 には聞いておりませぬ、姉君にお答え頂きたい」
「貴様……」
弟を手で制し、難陀が口を開いた。
「浅はかよのう、私 が太元帥 殿を裏切るとでも思うてか? 私 は摩瑜利の他に土産を持って帰るつもりなのじゃ」
横柄な言葉に、娑羯羅は眼を細めた。
「その土産とは?」
「さぁ、何であろうなぁ」
難陀は娑羯羅に背を向けた。
「追っ手が居ります。まず、その者を片付け、摩瑜利を手に入れることが先決」
「ホホホ……たった一人の追っ手に、八大竜王全員が必要かのう?」
嘲 る難陀の声に、娑羯羅は奥歯を噛みしめた。
「御自分で仰ったはず、追っ手が一人ということは、それだけ危険な者だと」
「どんなに危険な相手でも、一人の追っ手に対し八大竜王の四人が相手じゃ。うぬはそれを油断と申すか?」
「…………………………」
娑羯羅の沈黙に難陀は振り返った。その顔には勝ち誇ったような笑みが浮かんでいた。
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