0 同じ色の血 (沢田 壱)

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 一秒でも早く、解放されたかった。  何がいいことで、何が悪いことなのかも、俺にはもうわからない。  ただ、この世界に俺の居場所はなかったみたいだ。  友達もいない。  親友もいない。  恋人もいない。  父さんと母さんは、俺の意見に耳を貸してくれない。  自室にある机の引き出しから、シャツに包まれた堅い物体を取り出す。  ゆっくりとシャツを剥がしていくと、銀色が月光を反射させた。  近所のスーパーで買った包丁。  俺はシャツを足下に落とし、その柄を両手で握りしめた。  天井に上げた腕を、胸骨の間めがけて振り下ろす。  嘘みたいな量の鮮血が飛び散り、胸に包丁を突き刺した状態で、俺は絨毯の上に倒れた。  後頭部を打ち、血を吹く。  五十嵐、俺の血は、ちゃんと赤だったぜ。  緑でも、青でもない。  俺は、ちゃんと人間だった。  お前らと同じ、人間だったんだ……。
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