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一秒でも早く、解放されたかった。
何がいいことで、何が悪いことなのかも、俺にはもうわからない。
ただ、この世界に俺の居場所はなかったみたいだ。
友達もいない。
親友もいない。
恋人もいない。
父さんと母さんは、俺の意見に耳を貸してくれない。
自室にある机の引き出しから、シャツに包まれた堅い物体を取り出す。
ゆっくりとシャツを剥がしていくと、銀色が月光を反射させた。
近所のスーパーで買った包丁。
俺はシャツを足下に落とし、その柄を両手で握りしめた。
天井に上げた腕を、胸骨の間めがけて振り下ろす。
嘘みたいな量の鮮血が飛び散り、胸に包丁を突き刺した状態で、俺は絨毯の上に倒れた。
後頭部を打ち、血を吹く。
五十嵐、俺の血は、ちゃんと赤だったぜ。
緑でも、青でもない。
俺は、ちゃんと人間だった。
お前らと同じ、人間だったんだ……。
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