拝んではいけない

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拝んではいけないーーもちろんそう思いましたが、無下にしてしまうのもなんだか悪いような気がして躊躇していると、女性が頭を下げてまでお願いしてきました。私は、仕方なく花束の前に立ちました。 目を瞑っただけですぐに立ち上がった私に、女性は満面の笑みでお礼を述べました。 その日の夜。私はもやもやとした嫌な気持ちのまま眠りに着きました。深夜、不意に目が覚めました。体を動かそうとしても動きません。金縛りだと焦るも全く動かず、何か重い物が足先から胸の方へ上ってきました。それは胸に到達し、さらに上へと進んできます。 「きゃはははは!」 突然、耳元で幼い子どもの笑い声が聞こえました。次の瞬間ーー右半分が潰れた女の子の歪んだ笑顔が目の前に広がります。 下からは呻き声が聞こえます。 「たすけてぇぇぇ」 急に体が軽くなったと思ったら、顔が間近に浮かびました。若い女性の顔でした。それも女の子と同じように右半分が潰れていました。 はっと目を覚ますと、朝日が部屋のなかに差し込んでいました。身体中が汗でびっしょり濡れています。変な夢を見てしまったのかと周りを見渡すと、私は思わず声を上げてしまいました。窓際の壁に赤い手形がペタペタとついていたのです。小さな子どものような手形が。 私は家を飛び出して、図書館へ向かいました。電柱の前に来ると、二人のおばさんが話し込んでいました。 「またあの家族亡くなったらしいわよ」     
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