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喫茶店側の店内に出てみると、こちらはこちらでギンコの店とは雰囲気が違い、女性らしい温かみを感じる、落ち着ける場所だった。
家具は洗練された、というよりは木の質感を生かした素朴なものだ。
テーブルの上には親指ほどのガラスの一輪挿しに、スミレのような可愛らしい花が、窓辺にはやや大きめの花瓶に、ラベンダーのように小さな花をたくさんつける淡い薄紫の花などが、ふんわりとした緑の植物と一緒に生けられている。
レジカウンター横の小さな棚には、リボンで結ばれた小袋入りのクッキーなどのお菓子、ポプリやマスコット、ランチョンマットなどの布製品、小振りで可愛らしいティーカップなどの食器が置かれている。
たぶんここで購入することができるのだろう。
居心地も良さそうな店だが、お客は誰もいない。
喫茶店だから、お茶の時間から開店なのだろうか?
「今日はお天気が良いからね、外で食べよう!」
リン、と鈴の音を鳴らして少々厚みのあるドアを開けると、そこにはウッドデッキのテラス席が三つほどあった。
向かって右には二人掛けの席が二つ、左には四人掛けの少し大きめの席が用意されていた。
迷わず左側の席を選んで手前側にスズを座らせ、自分も席に着くと、ギンコは仮面を外してテーブルの上で指を組み、その上にあごを乗せてこう言った。
「さて……じゃあ他にこの世界について何か聞きたいことはある? 何でも聞いてよ!」
何から聞いていいのか解らなかったので、スズも仮面を取りながら、「……じゃあ、とりあえずギンコさんの本名は?」と聞いてみた。
この世界に住んでいるギンコの話、だからそれもアリだろう。
「…………」
沈黙。
組み合わさった指の上で笑顔のままギンコは固まっている。
そこへレオナが銀のお盆に紅茶を乗せて運んできた。
スズにはミルクたっぷりのミルクティー、ギンコにはレモンの砂糖漬けが添えられた紅茶が注がれた。
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