【第二章:スズと風のサーカス団シルフ 二十一】

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 淡く黄色い光が導くように掌から零れ落ちている。  スズはフーカの姿を思い浮かべ続ける。  その姿に集中すればするほど、風雷石の光ははっきりと形を作り、長く伸びるように一定の方向を指し示してくれた。  フーカがまだ入浴中だったらどうしようという混乱した考えと、それならすぐに顔を合わせずにすむという複雑な期待もあったが、光はそんなスズの気持ちとは無関係に、サーカステントのステージに向かって彼を導いてゆく。 「……どうしよう……引っ掛ってたの、この辺だったのに……なんでどこにも無いのよぉ……」  ステージ上は絞られたライトで控えめに照らされていたが、人気のない夜の舞台はどこか不安をかきたてる空気を帯びており、彼女の沈痛な思いを光の届かない舞台裏にまで伝染させている。  ステージ中央、胸の高さ程にまで低く降ろされたセーフティネットの下では、一際明るいオレンジ色のランプの光によって作られた影が揺らめき、小さな涙声はその影の持ち主から発せられていた。  膝をつき、手で床を撫でるようにして這って移動する彼女を驚かさないよう、スズはできるだけそっと近づいた。 「あの……ちょっと良い?」  極力柔らかな声で言ったつもりだったが、後ろから声をかけられた少女は跳ねるようにビクリと立ち上がり、ネットに頭をぶつけた。 「……な……何よっ!?」  フーカは長い寝衣の袖で顔を隠すようにして涙を拭きながら振り返った。泣いていたことを悟られまいとしたようだが、震える声は誤魔化せなかった。  寝巻きの上に羽織られた薄手の白い着物のようなその衣は、袖も裾もゆったりとした優雅なデザインで、ステージ衣装の時とはまた違う魅力を彼女から引き出していた。  鼻も目も赤く、気丈にもスズを睨みつけてはいるが、そんな表情でもやはり彼女は美しい。  一瞬見惚れて自分が何をすべきか忘れかけたが、(フーカも泣いたりするんだ)と、スズの方が照れつつ、心を改めて生徒手帳から写真を取り出した。 「いやこれ……拾ったんだけど……君のかなって……」 「……返して!!」  全て言い終わる前に、もの凄い速さでスズの手から写真は取り戻された。
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