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淡い夢の終わり
アイネが目の前で倒れた日から、数日間の間私には記憶が無い。
森でアイネが倒れたまでは覚えていて、その後に自分も恐らく気を失ったのも何となく分かる。
それからこの城に連れてこられるまでの記憶が、私の中からぽっかりと抜けている。
あの街に戻ろうにも、記憶の無い私は道に迷って倒れてしまうだろう。
恐らくはそれを見越しての処置で、アイネを倒した騎士の計算なのだろう。
手の込んだ装飾が施された服を着せられ、宿とは違う大きくてふかふかなベッドで目が覚めた。
そして部屋には黒と白の服を着ている女性が、私に朝の挨拶をしてそのまま笑顔で立っている。
部屋のドアがノックされると、間を置いてアイネを倒した騎士が部屋に姿を現す。
「よくもぬけぬけと……」
その騎士に対して怒りをぶつけるが、眉一つ動かさずに膝をついて低頭する。
「お目覚めになりましたか王よ、本日は戴冠式の御予定がありますので。ドレスの着付けはそちらのメイドに……」
「煩い! 私を早くアイネさんのところに返して下さい、私は王なんかじゃなくてアイネさんの生贄です」
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