彼女と、彼の言の葉は

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彼女と、彼の言の葉は

文に歌、刺繍に画。昔から愛を伝える手段はいくらでもあるけれど、遥かに上回るのは言葉。  「大川さん。ずっと好きでした!付き合ってください!」  午後の授業に向けて、十分に気分転換しておくはずの昼休み、私は見知らぬ男子に呼ばれて中庭で告白された。目の前にいる男子は2年3組の木原というらしい。同学年とはいえ、一学年に10クラスもあれば顔など分かるはずもない。ちなみに私は2年7組。なかなか距離も遠いから尚更だ。  「私のどこが好きなんですか?」  「えっ……。いや、その。大川さんって凄く綺麗だし、頭も良いし、えっと」  「凄く綺麗で頭の良い方ならいくらでもいるはずです。私でなくとも良いのでは?ちなみに私は木原君のことを今知った訳ですし、好きになれそうにありません。そういうわけでお付き合いできません。他を当たってください。失礼しますね」  彼だけではない、もう何度も聞いたそういう答えにうんざりしながら私は木原君に返事をして教室に戻った。もう、うんざりだ。
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