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このイケメンであるラズはよく分からない。
けれど先立つものが必要という意味で、僕はこの詰め合わせセットを見ながら、
「この世界では質屋ってあるかな。そこに行って持っているものを幾らか売りたいんだけれど。布とかどうかな?」
「売れると思うし、大きい町に行けば質屋もあるとは思う。そうだな、お金がないと生活が……いざとなったら俺のこの剣を売れば……」
ラズが持っている剣。
古めかしいが僕は、それに何かを感じる。
なんとなく強力な武器というか。
そして僕はあることに気付いてラズに、
「それはラズが記憶喪失になる前から持っているもの?」
「そうだが」
「この世界って、魔物って出るかな」
ファンタジーのお約束の魔物。
人を襲う怪物だけれど、と思いながら聞くとラズは頷く。
それならばと僕は思って、
「だったら持っていた方がいいよね。旅の途中で魔物に襲われたら怖いし。それに、記憶喪失の前から持っているなら、ラズが誰なのかそれを持っていたら知り合いが気付いてくれるかもしれないし」
「でも、お金が……」
「とりあえずこの布などを売ってから考えようよ。それに異世界の硬貨(コイン)もあるし、それはきっと珍しいものだと思うからそこそこのお値段で売れるといいと思う」
「珍しい硬貨(コイン)は、確かに人によっては集めているな。高値でも売れたはず。でも、良いのか? リト」
「硬貨(コイン)はそこそこ沢山あるし、布の方はたまたま購入したものだから僕にとってはそれほど問題ないから……それを売って当座の資金にしよう」
「……ありがとう」
「いえいえ。でも少しはこの世界の記憶があるみたいだね」
「そうみたいだ。今みたいに会話をしていくと段々に思い出していくのか?」
どうやらラズの記憶は会話でも思い出されるようだった。
こうしてラズと出会った僕は、ラズを追いかけていた人物が言った方向とは反対に、歩いて行く事にし、運よくそこそこ大きな町に、明るいうちに辿り着くことが出来たのだった。
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