第10章 家族の誕生日

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 誰かの煙草をくすねて吸うぐらいの感覚で、他のヤツが寝ている隣のベッドで全裸にしたカナを、俺は何の躊躇いもなく抱き人形を抱くようにして犯したんだ。  あいつは泣いていた。一度も笑顔になんかさせてやらなかった。枕で声を殺して、何をしても文句も言わずに俺を受け入れて…。朝になる頃には、いつも消えていた。  一度も避妊せずに、そんな配慮もできなかった当時の腐った俺を突き付けられるようで。殆ど犯罪者だったと思うような行為をした相手を前に、どう笑顔を取り繕えば良いんだよ?  カナを抱いているとき、全然気持ち良くなくて。  なぜか虚しさがどんどん広がっていくだけで、それなのに夜ごと通ってくるあいつを俺は。  どうしてあんなに残酷になれたのか説明できない。  ひたすら悪いことをしたという意識だけは焼き付いている。  俺に子供が授かりにくいのは全部、あのせいだって思ってた。  俺に幸せになっても良いって言ってくれたけど…。  それでも尚、あのしでかした罪の大きさに俺は…俺は……父親になんかなっていいんだろうか?  夏鈴と結婚して、幸せな人生を手に入れたけど…。もしかしたら、全部壊れたっておかしくない。もうカウントダウンが始まっているんだろうか?
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