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ニコルはゆっくりと目を開けた。
そこは当たり前だが、見慣れた自分の部屋だ。
レースのカーテンを透かし、柔らかな陽(ひ)が差し込んでいる。
久しぶりにこんなに穏やかな朝を迎えられたような気がした。
隣を見る。
ニコルの肩を抱きながら、アルベールがすうすうと寝息を立てている。
無防備な愛しき人の顔。
さすがにこれも寝たふり、ということはないだろう。
おだやかに寝入っているアルベールにぎゅっとしがみつき、厚い胸板に頬を押しつける。
「……兄さん、大好きだよ」
呟けば、ニコルの肩を抱いている手に力がこもったような気がした。
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