アメリの憂鬱

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アメリの憂鬱

一 夜汽車が空を渡って行きました。月は星の首飾りを宙に広げ、出来たトンネルを潜らせながら、夜汽車を明日へ走らせました。白い煙が消える頃、魔女が森のうえを横切るのが見えました。遠く近く、無邪気な花が歌声をあげては、森に諭されていました。 瞬きの間なのか、永遠を思わせる時間なのか、確かに時が止まったと思える静寂がありました。こんなにもこぼれそうな、いまにもこぼれそうな星さえ流れませんでした。 朝です。 草原に、羊の群れが現れました。みんな草露を飲んでいました。彼らは夜、呼び出されて働くために、いつでもとろんと眠そうな顔をして、朝間昼間問わずに眠りだします。彼らは眠りの番人に飼われています。眠りの番人は、毎朝誰より早く起き出して、羊の数を数えます。羊は大抵揃いません。帰ってくるタイミングを逃して、彼方誰かの夢のなかで迷子になっているか、寝つけない誰かの枕元で、まだ柵を飛び越え続けているか、どちらかです。そういう羊は、明日の夜が巡らなければ帰って来られません。一日さまよい、ようやく帰ってきた羊たちは、眠りの番人が丁寧に世話をし、休ませてやるのです。     
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