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中庭には篝火が焚かれている。
ヘレムをどこへやったのだろうか?
ユキは気が気では無い。
「どうしてこんな事を? ヘレムはどこ? 私をどこへ連れて行くの?」
ユキが必死に尋ねるもイリヤは答えない。
どこか遠くの方を見たままだ。
サッとイリヤが屈みこみユキの耳元で囁いた。
「ヘレムの命はユキ様にかかっています」
ユキが強張った顔でイリヤを見上げる。
イリヤの目線の先には宮殿の警備兵がいた。
「ユキ様。おめでとうございます」
警備兵はユキに敬礼し祝いの言葉を贈った。
「ありがとう」
ユキは言葉少なに答えた。
隣が皇子ではない事に警備兵は気づいたが、宮殿では日中この二人をよく見かけていたので、さほど気にはならないようだ。
「暗いので足元お気を付け下さい」
「ええ」
そうユキが答えると、鈍くなったユキの足を急かすように、イリヤが手を引いた。
「……どこへ連れて行く気?」
ユキが小さく尋ねる。
イリヤは答えない。
イリヤの顔を見上げるが、何を考えているのかわからない。
その表情が少し揺らめく。
イリヤの目線の先にはダーシンがいた。
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