成沢家の密事

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「いってきまーす」 「いってきまーす」 恵人と瑛人が元気良く家を出る。 また今日も小学校まで走って行くんだろうな。 俺もドライヤーで髪をセットして、 学校へ行く準備をしている。 「ごちそうさま」 「はい」 ちらっとキッチンを見ると、 悠太兄が食器を下げているのが見えた。 咲人兄がそれを受け取って洗い始める。 いつもと同じ風景。 昨日、あんなに濃いことがあったのに、 咲人兄も悠太兄も、いつもと同じ。 それはきっと凄いことなんだろうけど、 不思議と寂しさも感じる。 昨日のこと、二人とも忘れちゃったみたいだ。 玄関を出ようとすると、悠太兄が靴を履いていた。 「悠太兄、今日早いの?」 「あ?」 「俺より先に出るなんて珍しいから」 「色々あるんだよ、大学生には」 ・・・なんだよ、その言い方。 睨みつけると、悠太兄が笑いながら俺の頭をぽんぽんする。 「悠太、忘れ物」 咲人兄が玄関まで来て、悠太兄に携帯電話を手渡す。 「悪い」 「ううん」 これで、昨日の3人が密集した。 でもやっぱり咲人兄も悠太兄も、いつもと同じ。 「じゃ、行ってくる」 「うん、いってらっしゃい」 俺もいつもどおり、家を出て学校に行こう。 そう思って靴を履こうとすると、 「――兄貴」 えっ、 急に悠太兄が咲人兄を引っ張って、 「――ん、っ」 唇と唇がぶつかった。 「ゆ、悠太兄!」 「あ?なんだよ」 「こ、こんな・・・、いきなり、さ、咲人兄に」 「いいだろ別に。したくなったんだから」 勝ち誇ったように笑いながら、 悠太兄は外に出る。
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