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話を戻します。
暑い夏の日でした。
部屋の重い扉を開けた瞬間から異臭がしていました。
これは不思議なことではありません。夜逃げをするような人が、自分が出ていった後の生ごみや食べ物の心配なんてしませんからね。だから異臭がすることはよくあることです。その部屋のにおいは、甘く鼻にツンとくる、においでした。
物の少ない1LDKにはヒョウ柄のシーツがかけられた大きなベッド。こたつ机の上に化粧品が散らばっていました。クローゼットからは名刺入れと、名札が出てきたようです。
「キャバ嬢っすね」
男性のスタッフがゴミ袋に服を詰めながら言いました。
確かに男性のスタッフが手に取った服はドレスが多くありました。
「きっと、だらしなかったんだろうよ」
他の男性スタッフも言いました。
あとはトイレと、浴室だけ。
先に浴室を見ようと扉を開けた時、私は思わず尻もちをつきました。
バスタブに、髪のかたまりがあったのです。
サッカーボールくらいの大きさでした。
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