公園の遊具

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 あれから十年。  色んな噂が立ち、あの公園は立ち入り禁止の場所となった。  十年の間に鉄棒は撤去され、砂場も埋められて、今は雑草が生えるだけの荒れ地だ。  だけどいまだに、あの、馬のオモチャだけは置かれている。  当時も古ぼけていたけれど、今はもう、塗装は禿げ放題、錆は浮きまくり、あちこち欠け落ちてる部分もあって、頼まれたってあんな物では遊びたくないって状態だ。  だけどあの子は、今でもあれに乗っているんだろうな。  いつの間にか見かけることのなくなった女の子。…俺にだけ見えていた女の子。  たまに公園の側を通ると何かが軋む音がする。それは、子供の頃に聞いた、あの、馬のオモチャが揺れる音だ。  それを耳にした時は、俺は下を向き、走って公園の側を離れることにしている。せっかく見えなくなったあの女の子を、もう一度見てしまうことがないように。 公園の遊具…完
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