炭屋旅館

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三条通りから麹屋町通りを南に入り細い路地を歩く 子供の頃よく母に連れられた記憶が蘇る 炭屋旅館の玄関を入ると、女将が奥から出て来た 「シンイチさん、お待ちしてましたよ。お久ぶりね。お義母様の御葬式以来かしら。東京の美術館にお勤めされているとお父様からお聞きしましたよ。随分とご立派になられて」 「お久ぶりです。懐かしいなーここは変わってないですね。こちらが、東京で茶室を建築されるために見学をお願いしました方です。」 と言うと コウさんはお辞儀をした後 「この度は無理をお願いしてお部屋までご用意いただきありがとうございました。お世話になります。よろしくお願いいたします」 と言った。女将が 「シンイチさんの頼みですもの。ゆっくりしてらっしゃってね。シンイチさんもゆっくりしていけるのでしょ?夜咄の茶事の用意もしたのよ、久しぶりでしょう?お正客をお願いしますわ?お稽古ちゃんと 覚えてる?。まあ長話して冷えてしまうわね。さあ、おあがりになって」
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