炭屋旅館

3/12
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/61ページ
女将は私の返事など待たずに、正座から立ちあがり歩き出した。私達は女将の後について広い畳敷きの玄関から迷路のような板の廊下を歩いた。 「コウさんのお部屋はこちらになります。お一人でお泊まりになると聞いたけど、シンイチさんはご実家におかえりになるの?コウさん、シンイチさんのご実家のお茶室はもうご覧になった?それは素敵なのよ」 私は遮るように 「私は近くのホテルに泊まっています。女将も忙しいだろう。僕が案コウさんを案内するよ」 「はいはい。お邪魔しちゃ悪いわね。お茶事は19時から玉兎庵で案内させていただきます。それまでがゆっくりしてらしてね。」 炭屋旅館は茶の湯、俳諧、謡などの文化人のサロンとして始まったこともあり、コウさんの部屋も炉が切ってある茶室があった。
/61ページ

最初のコメントを投稿しよう!