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わたしの胎内に宿っていた確かな命は、本当にこの子であったのだろうか。
わたしたちが待ち焦がれた子供は本当にこの娘であり得るのだろうか。
しかし、あの痛みは本物だった。
想像を絶するほどの痛みが最大限に達したとき、朦朧とした意識のなかにいても、忘れることのできない声が耳に残っている。
この世に誕生したばかりの、その瞬間のわが子の産声、そして。
『女の子ですよ』
と声をかけた助産婦たちの笑顔が記憶をよぎる。
間違いなく、わたしはその命をこの世に送りだした。
それでも、その命がこの娘であるのかどうか、確信を持てなくなった。
どうすれば、何を得ればそれがはっきりするだろうか……。
そして、偶然だと思っていることが果たして必然という名のもとにつくりだされたものであるならば、わたしは何をもってそれを証明できるというのか。
たとえ証拠があったとしても、自身を危険に晒してしまうかもしれない。
そしてこの子も……。
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