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多分一瞬だ。
でも、生まれて16年、一度も感じなかった感情を、初めて受け取ったその瞬間は、何年もの長さに感じた。
唇から、心から。
ヴィアンナの目から。
そして対になるものが俺の中にあるその感情。
「ヴィアンナはずっと知ってたのか?」
「ナティエはずっと知らなかったんじゃないの?」
「ああ、知らなかった」
ヴィアンナのことも、自分自身のことも。
「ナティエ」さっきまでより少し熱をこめた言い方に聞こえた。
「いい事を教えてあげる」
「いい事?」
「私ね、修道院には行かないのよ」
「そうなのか?」ずっと修道女の服を着ている司教の娘だ。修道院にいって一生を神に捧げるのだと思っていた。
「私のお父様は出世欲が強くていらっしゃるからね。きっと娘は政略結婚でもさせてもっといい司教座に就きたいのだわ」
「政略結婚って」その娘はあっさり自分が売りに使われることを受け入れているように聞こえた。
「特に、戦果を挙げたり、王室とつながりを持つような勇敢な若い騎士様とかにね」でもそうではなかったのだ。
「ヴィアンナ……」ヴィアンナは笑っていた。
「何年かかるか分からないよ」
「私が適齢期のうちがいいわね」
「まあ、がんばってみるけど」
「お願いするわ」
ひまわり畑で、俺とヴィアンナの遠い恋が始まった。
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