ヒメクルミ

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私が胸元を頼りなく押さえているとすぐ、彼はステンレス製のたらいに半分くらい湯を張り、持ってきてくれた。 「お湯はこれで足りる?」 「はい。すみません……ありがとうございます」 「いいよ、全然」 彼は私に笑ってみせたあと、空のペットボトルとハサミを次に持ってくると、隣に立った。 「高さはこれくらい?」 彼は1.5Lのペットボトルの上位のほうへ手を横にかざしてみせる。 それは切る場所を指している。 「あ、はい……」 「オッケイ」 彼はそう言うと、簡単にハサミでペットボトルを切りはじめた。小さな作業だが、私ならスムーズにいかないため、彼に力があることに感心し見入ってしまう。 私はやはり、力持ちであるところを見るのが好きなよう。 「できた、これでいいかな?」 あっという間に切り終えた彼は、私にペットボトルを見せる。 「はい」 「よかった」 彼はそう言うと今度はそれに水をくみ、私の側に置いた。 「多かったらたらいに捨てて。あと、切り口気を付けてね。尖ってるところがあるから、手を切っちゃわないようにね」 「あ、はい……」 こういう優しいところも、好きになった今、確実に素敵だと胸に響く。 それから彼は着替えの準備をはじめたので、私は水が揚がるまで彼の部屋のキッチンでない部分を見渡した。 本当に物があまりなくすっきりとしているため、私が持参した“cotton candy”がシンプルな色なのに、目立つ。 本当に彼に受け取ってもらえてよかった…… 改めて感じ、それを入れていたカゴの辺りを見つめていると、テーブルに何かが転がっているのが見えた。
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