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自然に彼と繋がる手に力が入る。
すると彼は「……ひかれそうで、怖いな」と小さく呟き、視線を逸らした。
「……え?」
私は彼の不安げでいる理由が気になるが、それ以上に知りたい心が強かった。
でも、さすがに求める言葉を発するのは気がひけて、黙って待った。
すると彼は「知りたい?」と尋ねてきたので、私はゆっくりと頷いた。
同時に上げていた踵も地面につける。
「……本当は内緒にしておくつもりだったんだけど……」
「……はい」
「俺が大学生の頃、図書館で高校生の胡桃を見かけていたんだ」
私は記憶を辿りつつ「……図書館」と、繰り返した。
「うん……。胡桃は一人だったり、友人と来てたり、毎回バラバラだったけど、映像資料室の側の席で勉強してたのを知ってる」
そこで、一気に頭の中が高校時代に戻る。
たしかに私は、学校の後や休日に図書館へ足を向けたいた。
母親は図書館へ行くと言えば機嫌がよく、実際家より勉強が捗ったことを覚えている。
友人を連れて行くこともあったが、基本的には一人でよく行っていた。
映像資料コーナーの側の席はわりかし人が少なく、勉強がしやすかったため、私が選び座っていた場所だった。
まさかあの頃、彼が近くにいたなんて、驚きだ。
「……驚いたよね?」
私はすぐに首を縦に振った。すると彼の表情が、わかりやすく弱々しくなる。
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