クロッカス-2

15/24
351人が本棚に入れています
本棚に追加
/24ページ
「くさかったかな?」 私が何も言わないため、優君が恥ずかしそうに頭を掻く。 私はやはり無言で首を横に振った。 “そんなことない”と言う代わりに、優君にしがみつく。 「胡桃?」 彼の声は少し不安そう。 私の言葉を待っているのが伝わる。 「嬉しすぎて……」 「胡桃……」 「優君、大好き……」 久しぶりにする彼本人への告白。 私の心は優君への好きで溢れる。 「好き……」 優君は応えるように私を抱き包んだ。 しかし少しして「胡桃、ちょっと、待ってて……」と言うと、私を離してしまう。 「え……?」 まさか離されるなんて思わない私は、彼を見上げる。 きっと、表情は不安げ。 「また、別の日に変えてもらえるか頼んでみる」 「え?」 「胡桃と二人きりになりたいから……。待ってて」 彼はそう言うと、私の言葉も待たず唇にキスをした。 それから路地から店の側まで私の手を引き連れて行き、「待ってて」と言うと一人で店に入っていってしまった。
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!