351人が本棚に入れています
本棚に追加
/24ページ
「くさかったかな?」
私が何も言わないため、優君が恥ずかしそうに頭を掻く。
私はやはり無言で首を横に振った。
“そんなことない”と言う代わりに、優君にしがみつく。
「胡桃?」
彼の声は少し不安そう。
私の言葉を待っているのが伝わる。
「嬉しすぎて……」
「胡桃……」
「優君、大好き……」
久しぶりにする彼本人への告白。
私の心は優君への好きで溢れる。
「好き……」
優君は応えるように私を抱き包んだ。
しかし少しして「胡桃、ちょっと、待ってて……」と言うと、私を離してしまう。
「え……?」
まさか離されるなんて思わない私は、彼を見上げる。
きっと、表情は不安げ。
「また、別の日に変えてもらえるか頼んでみる」
「え?」
「胡桃と二人きりになりたいから……。待ってて」
彼はそう言うと、私の言葉も待たず唇にキスをした。
それから路地から店の側まで私の手を引き連れて行き、「待ってて」と言うと一人で店に入っていってしまった。
最初のコメントを投稿しよう!