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「じゃあ、君が撮ってみてよ!」
「え、嫌だよ!」
「ダメ! 文句言って自分が撮らないなんてズルいじゃん!」
人目も構わず大きな声で主張する彼女。仕方なく、スマホを受け取ると、途端に笑顔に戻った。
「ここでいいかな?」
場所を交代して、彼女はランプを背にして真っ直ぐに背筋を伸ばして立った。
「うーん。もうちょい左。力みすぎだから、少し足広げてリラックスして。表情柔らかく。はい、こっち見て撮るよ~」
カシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャッ。
「ちょっ押しすぎ!」
カシャッ。最後の一枚を確認すると、予想通り自然な笑顔の彼女が写っていた。
「うん。最後のこれがいいんじゃないかな?」
僕の横に回って画面を除き込んだ。柔らかい肩が少し体に触れ、シャンプーの香りが鼻孔をくずくって、トクン、と心臓が跳ね上がったような気がした。
「ホントだ! すごい可愛いく取れてる! え、もしかして連写したのわざと?」
「そうだよ。ぎこちない笑顔になってたから、笑わせたところを撮った」
「すごいじゃん! これ大事にするね!」
「うん」
スマホを返すと、彼女はもう一度写真を眺めて言った。
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