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仏壇の前に置いておいたガラスの置時計を再び掴むと、俺は二階へと静かにのぼっていき、寝室の前にある部屋のドアを開けた。
そこは静流の子供部屋だった。
長い間、雨戸の閉められたままの部屋は、少し埃っぽい臭いがした。
部屋の電気をつけると、時が止まっていたかのように、静流が死んだ時のままの状態が残されていた。
青い幼稚園に着ていくスモックと黄色い帽子、小さな通園用の黄色いショルダーバッグが、壁に掛けられたままだ。気の早い義父母から、幼稚園にあがったばかりの頃に贈られた勉強机。その上には、静流のお絵描き帳が置いてあった。
俺はその勉強机の上に、静かにガラスの置時計を置いた。
この部屋は、滅多に使うことはない。開かずの間のようなものだった。ここなら、さおりも許してくれるだろう。
部屋の電気を消し、ゆっくりとドアを閉める。
そして反対側の寝室のドアを静かに開ける。
薄暗い部屋のベッドには、掛布団がこんもりと盛り上がっている。まだテルくんは眠っているのだろう。
ホッとした俺は、彼を起こさないようにドアを閉めると、朝食を作るために階下へと向かった。
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