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「それが、今回のことはロワズ家から持ちかけられた縁談なのです。うちの娘たちの、誰でもいいからよこしたらバルバリアとの通商をよくしてやると。お父様も町の重役たちも大喜びで」
「そんなこと――わざわざ結婚させてまでやる取引ではないだろう。普通に通商条約を結べば――」
「わたくしにはよく分かりませんわ。お父様ったら大乗り気で、わたくしに今すぐ花嫁修業を始めろというのです」
ユーラは固く拳を握りしめた。膝の上で、ぶるぶるとその拳が震えている。
「わ、わたくし、自分の納得のできない結婚なんてしたくありませんのよっ。だから、家出してきたのです。ルアンナ様!」
「う、うん?」
「どうかかくまってくださいまし。ルアンナ様相手になら、お父様だって手出しはできません」
「いやそう言われてもな……」
クロード・ネイビーローズがルアンナ・アルディアーナの名を知らないとは思えない。たしかに抑止力にくらいはなるだろうが。
さりとて他人の家の事情に自分が首をつっこんでいいものか? まさか迎えに来たやつらを魔術で吹き飛ばすわけにもいくまい。アルディアーナの名を使って追い返すのは筋違いも甚だしい。
とは言え……
「たしかに……何かおかしいな」
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