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正真正銘の伯爵家であるロワズ家が、『なんちゃって貴族』であるネイビーローズ家に縁談を持ちかけた。平民に嫁をよこせと言っているようなものである。一応ネイビーローズ家はバルバリアの『権力者』ではあるが、通商に関することなど縁談を使わずともいくらでもやりようがあるだろう。
そもそも貴族の結婚は基本的に女性側の持参金を目当てにするものである。ネイビーローズ家は(バルバリア町民のおかげで)かなり裕福だが、さりとてわざわざ選ぶほどの理由になるとは思えない。
「ネイビーローズなら掌で転がせると思ったのか……?」
それならありえなくもないが……ネイビーローズを思いのままにして何がしたいのか。
「バルバリア自体を狙っている?」
「それだとアルベルト伯が黙ってないよ。あそこはあくまでアルベルト伯領だからね」
「……だよなあ」
しかしロワズ家の真意はともかく、当面の問題は……
「かくまってくださいましいいいい」
再びわんわん泣き出した目の前の少女のことで……
ルアンナは片手で顔を覆ってため息をついた。
「……とりあえずは、仕方ないか」
たぶんネイビーローズと話し合いをすることになるだろう。それを予感しながら。
*
予感は翌日には的中していた。ネイビーローズ家の人間が早速ユーラを迎えに来たのである。
「妹が大変ご迷惑をおかけしております。兄のテイラーです」
「どうも。ルアンナ・オーシェンだ」
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